会社設立の際の銀行口座開設および設立時資本金の払い込みについて

中国人が日本に会社設立するに当たっては、会社設立前に資本金の払込証明書を作成する必要があります。

しかしながら、日本人であればさほど困難でない資本金払込証明書の作成も、中国人が日本進出のために会社設立する場合、様々な困難が立ちはだかります。

代表的なものとしては、以下のような問題です。

①会社設立後の経営管理ビザ申請のため最低500万円の資本金の出資が求められる

②中国の有限公司が外為規制にかかり、日本の個人口座に送金ができない

③住民票や印鑑証明書が無いため非居住者の中国人は日本の銀行口座が作れない

香港やシンガポール等、海外から投資資金を集めることに積極的な国は、非居住者の口座の開設も可能ですが、日本では、短期滞在ビザで来日して日本の銀行口座を作ることは不可能です。

そのため、日本の会社設立の難易度が上がってしまうことが多いのです。

では、このような場合、どのように対処していくことが必要なのでしょうか。以下、解説いたします。

 

資本金払い込み前の事前検討事項

 

 

① 投資額について

中国人が経営管理ビザを取得する場合は最低500万円の投資額が必要です。

以前は外国人または外国企業が投資していること(いわゆる外資系企業であること)が必須でしたが、法改正により、現在の法律では、申請人本人が投資していることは必須ではなく、第三者による投資も認められます。

ただし、資金の形成過程等を説明できるようにしておくことが必要で、ここがよく問題になります。

また、日本で許認可が必要な事業を行いたい場合は資本金が一定額以上必要な場合があります。例えば日本で人材派遣業を行いたい場合は原則として2000万円以上の資本金が必要となることがありますので、500万円の資本金では不十分なこともあります。

②経営管理ビザとの関係について

出資者は長期ビザ(経営管理ビザ、技術人文国際ビザ等)を持っていない限り原則として役員報酬を受け取れません。

ただし、会社の株主として、株主配当を受け取ることはできます。

③出資者の証明について

資本金相当額の送金に当たっては、出資者と実際の送金者が一致していることを裏付ける資料が必要です。

中国の場合、年間5万ドルまでという送金制限があるため、他人の名義で送金していることが多々あります。

そのため、経営管理ビザ申請の際に入国管理局の審査官から資金の出所等を疑われるケースが相次いでいます。

また、法人出資の場合は、年間5万ドルまでという額の制限はありませんが、中国政府商務部の「対外投資許可」が必要です。

 

 

日本の銀行口座への資本金払い込みの実務フローについて

資本金の送金先は、どこでもいいわけではありません。以下のいずれかの方法で行う必要があります。

 

1.発起人の口座に振込む

発起人とは出資者のことで、出資者の口座に払込むのが原則になります。

発起人(出資者)が複数名いる場合には、その中の誰か1名の口座に払い込めば大丈夫です。

もちろん、出資者が自分が出資する金額を各人の口座に払込む方法でもOKです。

 

2.設立時の代表取締役の口座に振込む

設立時の代表取締役の口座に資本金を払込むことも可能です。

通常は発起人(出資者)=代表取締役のケースが多いのですが、出資者と代表者が異なるケースの場合には、代表者の口座に払込みをされることもあります。

発起人が外国人で日本に銀行口座を保有していないケースで利用されることが多いです。

代表者の口座に資本金を払込む場合には、払込金を受領することについて発起人(発起人が複数いる場合には、そのうちの1名でOK)から、設立時の代表取締役への委任状が必要です。

 

3.設立時の取締役の口座に振込む

最近になって、設立時(代表取締役以外の)取締役名義の口座への払込みも認められるようになりました。

設立時の取締役名義の口座に払込む場合には、上記2の設立時の代表取締役の口座のケースと同様に発起人から設立時の取締役への委任状が必要です。

 

4.全くの無関係な第三者の口座に振込む

発起人及び設立時代表取締役・設立時取締役の全員が日本国内に住所がないことが明白な場合に限って、第三者名義の口座へ資本金を払い込むことが可能です。

外国人が日本で起業する場合、代表取締役名義の銀行口座が日本で簡単に開設できればよいのですが、短期ビザで来日した外国人は、原則的に日本で口座を開設することはできません。

そのため、非居住者の外国人のみで会社を設立する場合はこの方法が便利です。

この場合も発起人から第三者への払込金の受領についての委任状が必要になることは変わりません。

 

資本金払い込み時の注意点

なお、銀行口座に資本金以上の残高があっても、別途に資本金(又はそれ以上)の額の払込みが必要になることには注意が必要です。

仮に500万円を資本金として定めた場合には、口座残高が500万円以上あっても、それだけでは足りず、一度出金してもう一度入金するなどの方法をとることが必要です。

 

 

 

当事務所のサポートについて

 

当事務所では、日本での会社設立や会社設立後の銀行口座の開設、ビザ申請でお困りの方のため、10年以上にわたり、多くの中国人の方をサポートしてきている、実績のある事務所です。

日本での会社設立や会社設立後の銀行口座の開設、ビザ申請でお困りの方は、是非お気軽にご相談ください。

 

 

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