中国人が日本で会社設立する場合の流れ
中国人が会社を設立する場合、以下の3つの形態があります。
①中国の会社の日本支店設立
②株式会社設立(※中国有限公司の子会社設立・日本支社設立を含む)
③合同会社設立(※中国有限公司の子会社設立・日本支社設立を含む)
今回は、最も多い形態である、株式会社を設立して、起業する場合を想定して、以下、説明します。
日本で会社設立する場合の流れ
①会社名(商号)の決定
まずは、日本の会社の名前(商号といいます)を決めます。
どんな名前が良いのか、日本で設立する予定の会社の名前を決めます。
使える文字としては、漢字、ひらがな、カタカナの他に英語も可能です。ただし、中国語簡体での会社名は認められません。
尚、株式会社を作る場合は中国の「有限公司」に近い意味の「株式会社」を会社名の前か後ろにつけることが絶対に必要になります。こちらは前につけることが多いですが、後ろにつけるケースも少なくありません。
具体的には、会社名は例えば「株式会社中国貿易」、「中国貿易株式会社」になります。合同会社の場合も同様で、「合同会社中国貿易」、「中国貿易合同会社」のいずれかになります。
また、文字が日本語と同じものを除き、中国語簡体文字は原則的に使えませんのでご注意ください。
②事業目的の決定
次に、事業目的を決定します。
会社は事業を行う場合は、定款に事業目的を記載しなければなりません。事業目的とは、なぜ日本でビジネスを行うのか、ということではありません。
事業目的とは、日本で行う予定の具体的なビジネスの内容です。中国の会社の「経営範囲」に近いものです。ビジネスプランはすでに頭の中にはあると思いますので、具体的に、どんな事業を行うのかを決めます。
中国の場合、「経営範囲」に含まれないものについては厳しく制限されていますので、中国人の方が会社を設立する場合、あれもこれも事業内容に詰め込みがちです。
しかし、日本の場合は中国より緩やかに、「上記各号に附帯または関連する事業」については行うことができますので、あまり神経質にならず、自分のビジネスが広く含まれるようにしていけばいいかと思います。
③出資者、取締役の人数、任期等の決定
出資者、取締役の人数、任期等を決めます。
誰が出資して、誰が取締役になり、任期は何年にするかを決めます。任期は2年~10年の間で決定します。取締役の任期は最大10年になりますので、「永久」などは認められません。
④本店所在地の決定
会社の本店をどこにするのか?を決めます。
会社を設立する場合、会社の本店(本社)をどこにするのかを決めなければなりません。
日本国内であれば自宅、店舗、事務所、どこを本店にしてもかまいませんが、本店は1ヶ所のみとなります。
中国人の方が日本で会社設立する場合、事務所の契約に意外と難航することもあり、自宅が中国にある場合や事務所の契約がまだできていない、という場合も多くあります。そのため、実務上は本店所在地として登記する事務所を先に探してから本店所在地を決定する、という流れになることが多いです。
⑤同一住所に同一名の法人がないかのチェック
上記の①~④が終わりましたら、同一住所に同一名の法人がないかのチェックを行います。あわせて、類似商号調査を行うことをお勧めします。
現在の日本の会社法では、同一住所、地番でなければ、隣にある会社と同じ名前をつけてもかまいません。
しかし、同業者が自分と同じような社名では、お客様が迷惑を被りますし、「不正競争防止法」で訴えられる危険性もありますので、できるだけ、インターネットや法務局で類似商号調査を行うことをお勧めします。
⑥定款の作成と認証
定款は、会社の決まり事を書いた冊子です。
この定款を作成して公証人に認証してもらいます。このとき、費用として印紙代4万円と、公証人へ支払う手数料として約5万2,000円が必要になります。
ただし、電子定款認証代行に対応した行政書士事務所に依頼した場合は、印紙代4万円は不要になります。また定款認証だけならば2万円程度でやってくれるので、通常は電子定款認証を行政書士に依頼した方が得です。もちろん、当社の担当行政書士事務所は電子定款認証代行に対応しています。
⑦資本金の振り込み
原則として日本の預金口座へ資本金を振り込みます。
また現在では、日本の銀行の海外支店に資本金を振り込む方法でもOKです。
出資者のうちの一人の預金口座へ、出資金を振り込みます。
実際、中国人が日本に会社を設立する場合、ここが一番の難関かと思います。
日本の非居住者である中国人だけで会社設立する場合、日本に銀行口座がない場合は多いですし、非居住者が日本に銀行口座を開設することは原則としてできないからです。
また、中国からは年間5万ドルまでという外国送金に関する規制がありますので、資本金が多い場合は、送金が難しくなることもあり、ここも難しいポイントです。
ただ、当事務所では、中国からの資本金の払い込みについての相談、サポートを行っており、ほとんどのお客様が会社設立のための資本金の払い込みを完了させておりますので、ご安心ください。
⑧日本の法務局で登記
会社設立の必要書類をそろえて法務局で登記を行います。
必要書類をそろえて、設立する会社を管轄する法務局で登記申請を行います。
この時、印紙代(登録免許税)として15万円かかります。これは国が法律で決めた税金ですので、安くしてもらうことは絶対にできません。
会社設立日は登記書類を提出した日になります。登記完了までは提出日から通常1週間程度かかります。中国の会社と比べれば、ずいぶん早く審査されるかと思います。
「登記簿謄本」は登記完了日以降でないと、取得することはできませんのでご注意ください。
⑨銀行口座の開設
会社登記簿謄本を取得して、銀行に口座を開きます。
中国人が日本に会社を設立する場合、実は、ここが一番の難関です。
近時は、マネーロンダリングの規制等が厳しくなっていますので、日本の銀行は簡単に法人銀行口座の開設を簡単には認めてくれません。
実際、日本人が会社設立した場合でも結構苦労しますので、外国人である中国人はさらに苦労することでしょう。
しかしながら、多くの方は、苦労はしますが、最終的には何とか銀行口座の開設に至っています。
ですから、例え理由もわからず法人口座開設を拒否されたとしても諦めずに頑張ってみてください。真っ当なビジネスを行うのであれば、どこかで、法人口座開設はできるはずです。
そして、銀行口座ができたら、個人に振り込んだ資本金を会社の口座に移さなければなりません。「登記簿謄本」を法務局で取得しましたら、銀行へ行き、会社の口座を開設して、そこへ資本金を移して下さい。
ここから、会社経営がスタートします。
会社設立完了までの期間は?
会社設立完了までの期間についてもよく質問を受けます。
会社設立の手続きだけなら、必要書類がそろえば、2週間程度あれば出来ます。
当事務所でも、1週間程度での会社設立をした例も多数あります。
ただ、外国人である中国人起業家が日本に会社を作る場合、日本に長期のビザを持っている場合を除き、中国で印鑑証明書の作成や海外送金等でもう少し時間がかかります。
具体的に一般的に手続に要する日数は
①発起人を決定し、発起人会を開き、会社設立の基本事項を決める
→約2~3日
②定款を作成し、公証人の認証を受ける
→約1週間必要
③出資金を金融機関に払い込み、資本金の払い込みが完了したことを代表取締役が調査する
→約1週間
④登記書類を作成し、登記申請を行う
→3日程度
登記申請の後、約1~2週間後に設立登記が完了します。
ですから、1から会社を作ると、通常は1ヶ月ぐらいかかることが多いと思います。
最短で日本でビジネスを開始したい場合は、専門家に委託するのがベストでしょう。
実際、外国である日本に会社を作ることは、外国人の方には難しい点が多いと思います。
でも、ご安心ください。
当事務所では、ご相談者の状況をお伺いした上で、適切なアドバイス、書類作成をいたします。
また、税理士、司法書士、社労士等の提携専門家もおりますので、様々な面からのサポートも可能です。
もし、中国人の方で、「日本に会社を設立して起業し、ビジネスを発展させたい」とお考えでしたらまずはご連絡下さい。