仮想通貨の売買と法人化
日本人のみでなく、中国人の方々も2017年は仮想通貨売買で大きな利益を得た方も多いようです。
シンガポールの会計士に聞いたところでは、億単位の利益を得て「億り人」となり、シンガポールに移住した、という話もちらほら耳にします。
ただ、その結果として、多額の税金が発生した方も少なくありません(ちなみに日本の所得税、住民税をあわせた最高税率は55%です)。
そこで、2017年からは節税のため、株式会社や合同会社を作って、仮想通貨売買法人化を進めていこうという動きが水面下で盛んになっています。
そこで、仮想通貨売買に関わっていくうえでの税金と法人化について解説します。
仮想通貨売買と税金の関係
2017年は、ビットコインを初めとする仮想通貨が大幅に値上がりし、まさに仮想通貨バブルの一年でした。
日本人であれ、中国人であれ、年初に仮想通貨に投資していた方は、10倍~100倍の利益を得たことと思います。
ただ、仮想通貨の含み益が拡大していくにつれて頭を悩ませるのが税金のことです。
では、日本在住の方が仮想通貨の売買で利益を上げた場合、どのくらい所得税がかかるのか、以下の表をご覧ください。
課税される所得金額
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税率
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控除額
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195万円以下
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5%
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0円
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195万円を超え330万円以下
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10%
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97,500円
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330万円を超え695万円以下
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20%
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427,500円
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695万円を超え900万円以下
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23%
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636,000円
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900万円を超え1,800万円以下
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33%
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1,536,000円
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1,800万円を超え4,000万円以下
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40%
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2,796,000円
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4,000万円超
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45%
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4,796,000円
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※上記の他、10%の住民税もかかります。
本当にざっくりとした計算で恐縮ですが、個人で仮想通貨売買で利益を出した場合、課税所得が4000万円以上になれば控除を差し引いても所得税と住民税合わせて、1800万円程度は税金がかかってしまいます。
これがもし法人化し、会社の資産で仮想通貨売買をして、課税所得が4000万円になった場合、実効税率約30%として、税金の負担は約1200万円で済みます。
そうすると個人で運用するより約600万円お得ですから、法人化を考える余地が出てくるのです。
利益が多いほど法人化は有利になる
このように、利益が増えれば増えるほど、法人で仮想通貨資産を運用したほうが、利確した時の節税メリットは大きくなりますので、法人化は有利になります。
ただし、法人で仮想通貨売買をして利益を出した場合、その利益は全て会社の利益になります。会社のお金なので、勝手に引き出すことは出来ません。
これを自分のお金にするには、自分が会社の役員になって、会社から給料(役員報酬)を払う流れになります。
役員報酬は自分の生活費に使ってももちろん問題ありません。
法人化により様々な支出を法人経費にできる
仮想通貨の売買の利益は個人の場合は雑所得ですので、一応利益を得るために要した経費の計上も可能ではあります。
しかし、法人の方が経費の範囲は広く、仮想通貨売買業として法人化すれば、様々な支出を経費にすることもできます。
具体例は下記の通りです。
家賃(持ち家なら事務所家賃を計上)
トレードに使っているスマホ端末代
仮想通貨売買の情報袖手のための書籍・雑誌
仮想通貨売買に関するセミナー参加費
電気代の一部
出張旅費等
このように、今仮想通貨のトレードで利益を上げるために自費で払っている物を会社経費として申告できるようになりますので、実質的な支払い税額も減らせます。
ただし、当然のことながら、事業と関係ない個人的な支出は経費では落とせません。この点は誤解されないようお願いいたします。
仮想通貨売買業の法人化にかかる費用と時間
①合同会社:10万円前後 登録免許税6万円
②株式会社:約10万円程度 登録免許税等20万円弱
合同会社と株式会社のどちらがいいのか?
ここでよく質問があるのが、法人化する場合に合同会社と株式会社のどちらがいいのか?ということです。
投資として仮想通貨売買業を行う目的なら簡単に設立できて、運営の自由度も高い合同会社で十分です。
ただ、将来会社の事業を拡大したい、他にも事業をやっていて、他社との関係で株式会社が必要などの目的があるのなら、株式会社が良いと思います。
仮想通貨売買業の法人化の注意点
①赤字でも法人があるだけで約7万円の税金は支払う必要がある
→また、毎月の税理士報酬が発生します。仮想通貨の取引量によって記帳代行の金額は変わってきます。
②法人口座を開設できるかどうかわからない
また、審査落ちした理由はトラブル防止のため通常教えてもらえることはありませんので、落ちたら別の銀行でチャレンジするしかありません。
③社会保険の手続き等が必要
自分に役員報酬を払ったり、従業員に給与を払ったりするときに給与や報酬から社会保険を天引きして納付することが必要となります。
このコスト、手間もばかになりません。
また、給与を支払う場合は、給与計算も行う必要があります。
まとめ
このように、仮想通貨売買業の法人化は節税効果はありますが、法人化すればすべて解決、というわけにはいきません。
ご自身の状況をふまえ、専門家と相談しつつ法人化は検討すべき課題といえるでしょう。
当事務所では、仮想通貨売買業を行いたい中国人の方のため、法人化を法務、税務両面からサポートいたします。
どうぞお気軽にご相談ください。