中国人に薬を販売する場合に行政の許可は必要か?
中国では、日本の薬局で購入した薬を販売するビジネスが流行っているようです。
これは、中国の薬は偽物が多く、日本製の薬は本物で、信頼できるということから、日本での販売価格よりも中国では高値で取引されるからです。
しかし、薬は人体の健康に直接かかわることから、中古品の輸出の許可に必要な「古物商」等に比べ、要件は大幅に厳しくなっています。
また、後述しますが、SNS等で薬を日本に観光に来ている中国人観光客に無許可で販売すると犯罪となり、逮捕されますので、ご注意ください。
中国人に薬を販売する場合に行政の許可は必要か?
これは意外かもしれませんが、結論から言うと、国内で流通している医薬品をそのままの形態で輸出する場合は、日本法では医薬品・医療機器等の許認可は必要ありません。
しかし、名称、パッケージ等何らかの変更を加えた場合は医薬品製造業許可を取得する必要があります。
また、一般に、医薬品の製造販売許可は国内の居住者の健康を守る趣旨であることから、輸出より輸入の規制がかなり厳しくなっています。
ですから、中国で薬を販売したいのであれば、日本で輸出が可能な状態としたうえで、中国でも薬の輸入や販売の条件を満たす必要があります。
具体的には以下のようになります。
国内で医薬品・医療機器等法による製造業許可および品目ごとの製造販売承認を受けて市場に流通している製品をそのままの形態で輸出する場合
医薬品をスギ薬局やマツモトキヨシ等のドラッグストアから購入してラベルの貼り替えやパッケージデザインの変更等することなく、そのままの形態で輸出する場合は、日本の医薬品・医療機器等法上の許認可を取得する必要はありません。
しかし、何らかの理由で製品が日本に返品された場合、医薬品製造販売業の許可がないと輸入することはできません。
そして、医薬品製造販売業の許可は非常に厳しく、貿易業をしているだけの一般的な中国人の方が取得することはできません。
国内で医薬品・医療機器等法による製造業許可および品目ごとの製造販売承認を受けた製品に変更を加えて輸出する場合
製品に変更を加えるとは、名称やその他の記載事項などを輸出先の中国語に変更すること、あるいはパッケージデザインを変更することなども含みます。これらの変更を加えた場合は、輸出用に医薬品を製造したものとみなされ(医薬品・医療機器等法施行規則第26条)、医薬品製造業許可を取得する必要があります。医薬品製造業許可の取得にあたっては都道府県薬務課に申請します。
また、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)を経由して厚生労働大臣に「輸出用医薬品製造業届書」(以下、輸出届)による届出を行います(医薬品・医療機器等法施行令第74条、医薬品・医療機器等法施行規則第265条)。
一部ワクチン等生物に該当するものについては、都道府県薬務課ではなく、地方厚生局に申請します。
医薬品・医療機器等法による製造業許可や品目ごとの製造販売承認を取得していない製品を輸出する場合
上記と同様に「医薬品製造業許可」を取得した者が厚生労働大臣に「輸出用医薬品製造届出」を提出します。輸出者が製造業者と異なる場合は、輸出者が製造販売業許可または販売業許可を取得する必要があります(ただし専ら輸出を業とする場合には販売業の許可は受けられません)。
医薬品製造業許可申請および輸出届の方法
「医薬品製造業許可申請」および「輸出届」は、厚生労働省が無償で提供している電子申請ソフトウェアで作成します。
但し、この手続きは非常に難易度が高いので、専門の行政書士に依頼することをおすすめいたします。
GMP(Good Manufacturing Practice)適合証明は通常必要
医薬品の輸出入は、自国民の健康を守ることが各国の薬務行政の課題であるため、どの国でも輸出より輸入規制が厳しくなっています。
例えば、輸出相手国からGMP適合証明を求められる場合があります。GMP適合証明の発給についてはPMDAにお問い合わせください。
輸出時は輸出先国である中国の輸入・販売規則に留意し、事前に対策を準備しておくことが必要です。
医薬品の無許可販売事例
参考までに、無許可での医薬品の販売目的での保管で逮捕された事例を紹介します。
個人で中国人の観光客相手に医薬品の販売を行うためには薬局の開設許可(いわゆるドラックストアの開設許可)が必要です。
QQやWE CHAT等、中国のSNSでやればばれないと思っている中国人の方もおられますが、そのようなことはありませんので、ご注意ください。
出典:毎日新聞ニュース(一部伏字)
日本製の薬を許可を受けずに中国人など個人への販売目的などで保管していたとして、警察は埼玉県の医薬品卸売会社の社長の男らを逮捕しました。
逮捕されたのは、埼玉県草加市の医薬品卸売会社「〇〇××」の社長・AA容疑者(60)ら2人です。警察によりますと、AA容疑者らは今年9月、貧血や水虫などの医薬品約120点を許可を受けずに病院や薬局以外の中国人など個人を相手に販売する目的で保管していた疑いが持たれています。
警察は今年5月にSNSを利用して中国人観光客に密売していた中国人グループを摘発し、入手先などを調べたところ、AA容疑者らが浮上したということです。中国人への医薬品の販売をめぐって卸売会社が摘発されるのは珍しいということで、警察は仕入れや販売の実態解明を進めています。
当事務所のサービス
当事務所では、薬局の開設許可、医薬品販売業(店舗販売業)等の申請代行を承っております。
中国人の観光客に向け、医薬品の販売を日本で行いたい場合は、お気軽にご相談ください。
※相談費用は1回1時間以内1万円(税別)となります。
「このような場合に医薬品販売許可は必要か?」等の質問に対する無料での回答は致しかねますので、ご了承ください。