有料職業紹介事業の許可の条件

近時、日本では、人材不足が深刻な状況となっています。

そのため、有料職業紹介許可の取得を希望する中国人の経営者も増加中です。

そこで以下、有料職業紹介業の許可の条件等につき、説明します。

1申請者が、当該事業を健全に遂行するに足りる財産的基礎を有すること

→次の双方に該当し、有料職業紹介事業を的確、安定的に遂行するに足りる財産的基礎を有することが必要です。

(1) 資産(繰延資産及び営業権を除く。)の総額から負債の総額を控除した額(以下「基準資産額」という。)が500万円に申請者が有料職業紹介事業を行おうとする事業所の数を乗じて得た額以上であること。

→人材派遣業の資産要件は2000万円で、そのうち1500万円は現金であることが必要です。

ですので、人材派遣業と比べると、緩和された基準となります。

(2) 事業資金として自己名義の現金・預貯金の額が、150万円に申請者が有料職業紹介事業を行おうとする事業所の数から1を減じた数に60万円を乗じた額を加えて得た額以上となること。

2 個人情報を適正に管理し、及び求人者、求職者等の秘密を守るために必要な措置が講じられていること

→次の条件に該当し、業務の過程で得た求職者等の個人情報を適正に管理し、求人者、求職者等の秘密を守るために必要な措置が講じられていること。

(1) 個人情報管理体制に関する判断

イ 求職者等の個人情報を適正に管理するため、事業運営体制が、次のいずれにも該当し、これを内容に含む個人情報適正管理規程を定めていること。

(イ) 求職者等の個人情報を取り扱う事業所内の職員の範囲が明確にされていること。
(ロ) 業務上知り得た求人者、求職者等に関する個人情報を業務以外の目的で使用したり、他に漏らしたりしないことについて、職員への教育が実施されていること。
(ハ) 本人から求められた場合の個人情報の開示又は訂正(削除を含む。以下同じ。)の取扱いに関する事項についての規定があり、かつ当該規定について求職者等への周知がなされていること。
(ニ) 個人情報の取扱いに関する苦情の処理に関する職業紹介責任者等による事業所内の体制が明確にされ、苦情を迅速かつ適切に処理することとされていること。

ロ 「適正管理」については、以下の点について留意するものとする。

(イ) 有料職業紹介事業者は、イの(イ)~(ニ)に掲げる事項を含む個人情報適正管理規程について自らこれを遵守し、かつ、その従業者にこれを遵守させなければならないものとする。
(ロ) 有料職業紹介事業者は、本人が個人情報の開示又は訂正の求めをしたことを理由として、当該本人に対して、不利益な取扱いをしてはならないものとする。

ハ 「個人情報の収集、保管及び使用」については、以下の点に留意するものとする。

(イ) 有料職業紹介事業者は、求職を受理する際には、当該求職者の能力に応じた職業を紹介するため必要な範囲で、求職者の個人情報(以下「個人情報」という。)を収集することとし、次に掲げる個人情報を収集してはならないものとする。ただし、特別な業務上の必要性が存在することその他業務の目的の達成に必要不可欠であって、収集目的を示して本人から収集する場合はこの限りではない。
a人種、民族、社会的身分、門地、本籍、出生地、その他社会的差別の原因となるおそれのある事項
b思想及び信条
c労働組合の加入状況

aからcについては、具体的には、例えば次に掲げる事項等が該当する。

a関係
(a) 家族の職業、収入、本人の資産等の情報(税金、社会保険の取扱い等労務管理を適切に実施するために必要なものを除く。)

(b) 容姿、スリーサイズ等差別的評価に繋がる情報

b関係 人生観、生活信条、支持政党、購読新聞・雑誌、愛読書
c関係 労働運動、学生運動、消費者運動その他社会運動に関する情報

(ロ) 有料職業紹介事業者は、個人情報を収集する際には、本人から直接収集し、又は本人の同意の下で本人以外の者から収集する等適法かつ公正な手段によらなければならないものとする。
(ハ) 有料職業紹介事業者は、高等学校若しくは中等教育学校又は中学校の新規卒業予定者から応募書類の提出を求めるときは、職業安定局長の定める書類(全国高等学校統一応募用紙又は職業相談票(乙))により提出を求めるものとする。
(ニ) 個人情報の保管又は使用は、収集目的の範囲に限られる。ただし、他の保管若しくは使用の目的を示して本人の同意を得た場合又は他の法律に定めのある場合は、この限りではない。

 

(2) 個人情報管理の措置に関する判断

次のいずれにも該当し、求職者等の個人情報を適正に管理するための措置が講じられている
こと。

イ 当該要件を満たすためには、次のいずれにも該当することが必要である。
(イ) 個人情報を目的に応じ必要な範囲において正確かつ最新のものに保つための措置が講じられていること。
(ロ) 個人情報の紛失、破壊及び改ざんを防止するための措置が講じられていること。
(ハ) 求職者等の個人情報を取り扱う事業所内の職員以外の者が求職者等の個人情報へのアクセスを防止するための措置が講じられていること。
(ニ) 職業紹介の目的に照らして必要がなくなった個人情報を破棄又は削除するための措置が講じられていること。

ロ 「適正管理」については以下の点に留意するものとする。

(イ) 有料職業紹介事業者は、その保管又は使用に係る個人情報に関し適切な措置(イの(イ)から(ニ)まで)を講ずるとともに、求職者等からの求めに応じ、当該措置の内容を説明しなければならないものとする。
(ロ) 有料職業紹介事業者が、求職者等の秘密に該当する個人情報を知り得た場合には、当該個人情報が正当な理由なく他人に知らされることのないよう、厳重な管理を行わなければならないものとする。特に、有料職業紹介事業者による秘密漏洩には罰則が科されている(法第51条第1項、第66条第9号)ことに留意するものとする。
「個人情報」とは、個人を識別できるあらゆる情報をいうが、このうち「秘密」とは、一般に知られていない事実であって(非公知性)、他人に知られないことにつき本人が相当の利益を有すると客観的に認められる事実(要保護性)をいうものである。具体的には、本籍地、出身地、支持・加入政党、政治運動歴、借入金額、保証人となっている事実等が秘密にあたりうる。

 

31から2までのほか、申請者が、当該事業を適正に遂行することができる能力を有すること

次のいずれにも該当し、当該事業を適正に遂行することができる能力を有すること。

(1) 代表者及び役員(法人の場合に限る。)に関する要件(役員の意義については、3の有料職業紹介事業許可基準に関する留意事項の(3)のニ参照)代表者及び役員(法人の場合に限る。)が、次のいずれにも該当し、欠格事由に該当する者
その他適正な事業遂行を期待し得ない者でないこと。
イ 法第32条に規定する欠格事由に該当する者でないこと。
ロ 貸金業法(昭和58年法律第32号)第2条第1項に規定する貸金業を営む者にあっては
同法第3条の登録、質屋営業法(昭和25年法律第158号)第1条に規定する質屋営業を
営む者にあっては同法第2条の許可を、それぞれ受け、適正に業務を運営している者である
こと。
ハ 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和23年法律第122号)(以下「風営適正化法」という。)第2条第1項に規定する風俗営業、同条第5項に規定する性風俗関連特殊営業、同条第11項に規定する接客業務受託営業その他職業紹介事業との関係において不適当な営業の名義人又は実質的な営業を行う者でないこと。
ニ 外国人にあっては、原則として、出入国管理及び難民認定法(昭和26年政令第319号。以下「入管法」という。)別表第一の一及び二の表並びに別表第二の表のいずれかの在留資格を有する者であること。
ホ 住所及び居所が一定しないなど生活根拠が不安定な者でないこと。
ヘ 不当に他人の精神、身体及び自由を拘束するおそれのない者であること。
ト 公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる行為を行うおそれのない者であること。
チ 虚偽の事実を告げ、若しくは不正な方法で許可申請を行った者又は許可の審査に必要な調
査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者でないこと。
リ 国外にわたる職業紹介を行う場合にあっては、相手先国の労働市場の状況及び法制度につ
いて把握し、並びに求人者及び求職者と的確な意思の疎通を図るに足る能力を有する者であ
ること。

(2) 職業紹介責任者に関する要件

職業紹介責任者は、次のいずれにも該当し、欠格事由に該当せず、また業務を適正に遂行する能力を有する者であること。

イ 法第32条の14の規定により、未成年者ではなく、法第32条第1号から第3号までに掲げる欠格事由のいずれにも該当しないこと。

ロ (1)のロからリのいずれにも該当すること。
ハ 次のいずれにも該当し、労働関係法令に関する知識及び職業紹介事業に関連する経験を有する者であること。

(イ) 職業安定局長に開催を申し出て、実施団体としての要件を満たしていることが確認された者が実施する「職業紹介責任者講習会」を受講(許可又は許可の有効期間の更新に係る申請の受理の日の前5年以内の受講に限る。)した者であること。
(ロ) 成年に達した後3年以上の職業経験を有する者であること。
(3) 事業所に関する要件
有料職業紹介事業を行う事業所は、次のいずれにも該当し、その位置、面積、構造、設備からみて職業紹介事業を行うに適切であること。
イ 位置が適切であること
風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律で規制する風俗営業や性風俗関連特殊営業等が密集するなど職業紹介事業の運営に好ましくない場所にないこと。
ロ 事業所として適切であること
次のいずれにも該当し、事業所として適切であること。
(イ) 職業紹介の適正な実施に必要な広さを有するものであること。
具体的には、職業紹介事業に使用し得る面積が、おおむね20㎡以上であること。
ただし、専らインターネットにより対面を伴わない職業紹介を行う場合については、面積の大小を要件としないこと。この場合において、対面を伴う職業紹介事業の運営がなされたときは、許可の取消し対象となる旨の許可条件を付するものとすること。さらに、適切な苦情処理等の実施について必要な指導を行うものとすること。
(ロ) 求人者、求職者の個人的秘密を保持し得る構造であること。
(ハ) 事業所名(愛称等も含む。)は、利用者にとって、職業安定機関その他公的機関と誤認
を生ずるものでないこと。
(4) 適正な事業運営に関する要件

イ 申請者及び申請者の行う他の事業との関係に関する要件
次のいずれにも該当し、申請者及び申請者の行う他の事業との関係で、職業紹介事業の適
正な運営に支障がないこと。
(イ) 申請者が国又は地方公共団体でないこと。
(ロ) 有料職業紹介事業を会員の獲得、組織の拡大、宣伝等他の目的の手段として利用するも
のでないこと。
(ハ) 事業主の利益に偏った職業紹介が行われるおそれのある者でないこと。
(ニ) その紹介により就職した者のうち、労働者災害補償保険法施行規則第45条の18第5

号の作業に従事する者が、労働者災害補償保険法第35条第1項の規定により労働者災害
補償保険の適用を受けることを希望する場合に、同項に規定する団体の代表者として所定
の申請を行うものであること。
(ホ) 労働者派遣事業と兼業する場合にあっては、次に掲げる要件を満たすこと。

【事業運営の区分に関する判断】

求職者に係る個人情報と派遣労働者に係る個人情報が別個に作成され別個に管理されること等事業運営につき明確な区分がなされていること。
当該要件を満たすには、次のいずれにも該当することが必要であること。

(a) 労働者の希望に基づき個別の申込みがある場合を除き、同一の者について労働者派遣に係る登録と求職の申込みを重複して行わず、かつ、相互に入れ換えないこと。
(b) 派遣の依頼者又は求人者の希望に基づき個別の申込みがある場合を除き、派遣の依頼と求人の申込みを重複して行わず、かつ、相互に入れ換えないこと。
(c) 派遣労働者に係る個人情報と求職者に係る個人情報が別に管理されること。
(d) 派遣先に係る情報と求人者に係る情報が別に管理されること。
(e) 労働者派遣の登録のみをしている派遣労働者に対して職業紹介を行わないこと。また、求職申込みのみをしている求職者について労働者派遣を行わないこと。
(f) 派遣の依頼のみをしている者に対して職業紹介を行わないこと。また、求人申込みのみをしている求人者に対して労働者派遣を行わないこと。
ロ 業務の運営に関する規程の要件

法の次の各条文の内容を含む業務の運営に関する規程を有し、これに従って適正に運営されること(様式例第1号参照)。
第2条(職業選択の自由)、第3条(均等待遇)、第5条の3(労働条件の明示)、第5条の4(求職者等の個人情報の保護)、第5条の5(求人の申込み)、第5条の6(求職の申込み)、第5条の7(紹介の原則)、第32条の3(手数料)、第32 条の12(取扱職種の範囲等)、第34条において準用する第20条(労働争議に対する不介入)。
なお、この規程は2に定める個人情報適正管理規程と一体のものとしても差し支えないこと。
ハ 手数料に関する要件
(イ) 適法な手数料以外に職業紹介に関し、いかなる名目であっても金品を徴収しないこと。
(ロ) 徴収する手数料を明らかにした手数料表を有すること。
ニ 名義貸しに関する要件

他に名義を貸与するために、又は職業紹介責任者となり得る者の名義を借用して許可を得るものではないこと。
ホ 国外にわたる職業紹介に関する要件
(イ) 国外における取次機関を利用する場合には、当該取次機関の利用について許可を受けたもの以外を利用するものでないこと。
(ロ) 国外における職業紹介を実施するにあたって申請書に記載し、又は届け出た国を相手先国として職業紹介を行うものであること。
(ハ) 入管法等関係法令及び相手先国の法令を遵守して行うものであること。
(ニ) 求職者に対して渡航費用その他を貸し付け、又は求人者がそれらの費用を貸し付けた求職者に対して職業紹介を行うものでないこと。

有料職業紹介業についてのFAQ

有料職業紹介について、よくある質問を

Q.有料職業紹介業の許可があれば、人材派遣業もできますか?

A.有料職業紹介の許可のみで人材派遣業はできません。人材派遣業の許可を持っていないのに人材派遣を行うと違法になります。

Q.特定派遣業というものがあるそうですが、申請可能ですか?

A.特定派遣は2018年9月に廃止されており、現在では一般派遣のみです。

Q.有料職業紹介業を行った場合、在留資格の申請書の人材派遣業の欄に記入が必要ですか?

A.有料職業紹介の場合、人材派遣ではないので、申請書の最後の方のページの人材派遣の欄に記入は不要かと思います。

Q.社会保険料は紹介先、紹介元企業のどちらが負担しますか?

A.人材を直接雇用し、給与を支払うのは受け入れ先ですので、社会保険料は給与から天引きされます。したがって、当然給与を支払う受け入れ先が負担します。

 

Q.一度に人材紹介をたくさん行うと、入管のビザ申請が不許可になると聞きました。紹介できる人数に制限はありますか?

A.人数ですが、上記の通り、有料職業紹介事業であれば、そもそも紹介元は原則的に書類上上がってこないため、人数制限の話は出てこないのではないかと思います。

また、人材派遣業の場合でも、単価×派遣人数が売り上げとなるので、人数制限=売り上げの上限設定となり、貿易会社にこれ以上商品を売るなと入管が言うことと同様になるので、このような人数制限は原則的に行うべきではないと思います。

ただ、普通は1度に大量に人材派遣を行うことはないので、1度に大量の申請を出すのは不自然です。また、給与を払うのが派遣元であることから、1度に大量の申請を出すのは不自然ですし、派遣元の財務状況(経営の安定性)との関係で注意が必要かと思います。

Q.ベトナムから大卒の若者を2か月だけ自社に招へいし、教育後、同業他社に紹介する形で就労ビザを取得したいが、可能でしょうか?

A.2か月の雇用期間でその後企業(紹介先未定)に紹介、という形ですと、許可後のほとんどは他社で勤務することになりますので、審査官としては、許可は与えにくい、という印象を受けますので、おすすめできません。

 

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