特定技能ビザとは
日本では、ここ数年、人材不足が深刻化しています。建前はどうあれ、技能実習制度がこの日本の人材不足を緩和する役割を担ってきた面は否定できません。
そのため、当事務所としても、色々な意見はありますが、人材不足の分野については、単純労働ビザのようなものも今後は考えていくべきではないかと考えておりました。
ただ、これが認められるには、かなりハードルが高く、政府も5年ぐらい先にはやるのかな、という感じで考えていました。
しかし、人材不足は急速に進みそうなので、政府は2019年4月にも外国人労働者向けに新たな在留資格をつくることになりました。
これが在留資格「特定技能ビザ」というものです。
特定技能ビザの内容
特定技能ビザは2019年4月をメドに認められるようになりそうです。
特定技能ビザは、最長5年間の技能実習を修了した外国人に、さらに最長で5年間、就労できる在留資格となります。つまり、最長10年のビザです。
そして、一定の試験に合格すれば、家族を招いたり、より長く国内で働いたりできる在留資格に移行できるようです。
このようなビザがあれば、日本の人材不足解消に役に立つ可能性はあると思います。
特定技能ビザの流れ
特定技能ビザの条件
①全ての業種に共通する条件:一定の日本語能力が必要
まず,全ての業種に共通する条件の一つとして,「日常会話程度の日本語能力を求める」としています。
具体的には、現行の日本語能力試験の水準でいえば最低限「N4」レベルとなるでしょう。
さらに、受け入れる業種ごとに必要な日本語能力が設定される可能性もあるようです。
ただし、この日本語能力については,技能実習生として3年間の実習を終えた方は,一定の日本語教育を受けているとみなされ、N4は免除される予定です。
②業種、業態別の条件:試験等がある
上記のような共通の条件に加え,実態に応じ、各業種別で条件が設定されるようです。
職種ごとに働くために必要な知識や技能があるかを業種別の監督官庁が定める試験で確認するような制度が想定されています。
③日本人が働く場合と同等額かそれ以上の報酬が必要
日本できちんと働いてもらうためには、労働基準法が守られないような搾取構造の会社で雇用されることのないよう、正当な報酬が払われるような制度にしないといけません。
現在の就労ビザでは、日本人が働く場合と同等額の報酬支払が求められています。
これと同様に、日本人が働く場合と同等額の報酬支払が条件となる予定です。
特定技能ビザで永住権申請は可能か?
特定技能ビザでは1号で5年、2号に移行してさらに5年、合計10年の就労が可能ですから、理屈上、永住ビザの申請が可能なように思います。
しかし、政府では、1号の5年の期間は永住に必要な日本の在留期間には算入しない方針です。
そのため、特定技能ビザで来日しても、永住ビザの申請は許可されず、その他のビザに変更できない限り、最長10年で帰国、というケースが多くなりそうです。
特定技能ビザの矛盾
しかしながら、現行制度という点から見ると、矛盾をはらんでいます。
そもそも、技能実習制度は「日本でしか学べない技術を日本で習得し、これを本国に帰って海外移転する」という建前になります。
一方、在留資格「技能ビザ」は「外国・外国人特有の技能を有する者」に与えられる在留資格です。
つまり、両者のベクトルは逆なのです。
個人的には、このような在留資格の創設には、現行法の枠組みではかなり困難なものが伴うように感じており、むしろ人材不足が深刻な業種については、「単純就労ビザ」を与える一方、不法就労を防止するための罰則強化を盛り込んだ方がいいようには考えています。
まとめ
それにしても、近時の人材不足は深刻です。ただ、どうしようもないかというとそうでもありません。
当事務所でも、中小企業の皆様の人材不足解消のための方法をアドバイスしております。
求人しても人が来ない、採用してもすぐやめてしまう、等のお悩みをお持ちの経営者様は、お気軽にご相談ください。